周病が進行すると、歯を支える組織が破壊され歯がグラグラするケースがあります。これ以上進行させないためにも、早期の発見と適切な治療が必須でしょう。
本記事では、歯周病の進行度に応じた治療方法を詳しく解説します。
歯を失った後の選択肢や、歯周病が全身に及ぼす影響についても紹介。
歯周病の予防方法や、歯がグラグラする他の原因についても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
歯周病とは?
歯周病は、口腔内のプラーク(歯垢)に潜む細菌によって引き起こされる感染症です。
初期段階では、歯茎に軽い炎症が生じる程度ですが、放置すると炎症が進行し、歯を支える歯周組織や顎の骨(歯槽骨)にまで影響が及びます。
歯周病は、虫歯と並ぶ口腔内の疾患であり、日本人が歯を失う最も一般的な原因なのです。
症状が進行するまで自覚症状が少なく、気づかぬうちに深刻な状態に陥ることが多いため、早期発見と予防が非常に重要です。
関連記事:歯周病と虫歯の違いと両方の口腔内疾患を予防するための効率的な方法
なぜ歯周病で歯がグラグラするのか
歯周病が進行すると、歯と歯茎の間にある歯周ポケットで炎症が発生し、その炎症が深部に及ぶと顎の骨にまで影響を及ぼします。
顎の骨が細菌による炎症から逃れるために吸収されることで、骨の量が減少し、歯を支える力が弱まります。
これが、歯がグラグラする原因です。
顎の骨は歯を支える重要な役割を果たしているため、この骨が減少すると、歯は支えを失い、揺れ始め、最終的には抜け落ちてしまうことになります。
歯周病による骨の吸収は進行が早い場合もあり、放置すると急速に悪化するため、早期の治療が不可欠なのです。
歯周病の進行度
歯周病は、進行の度合いに応じて段階的に悪化していく病気です。
初期段階では比較的軽い症状から始まりますが、適切な治療を受けずに放置すると、徐々に重篤な状態へと進行し、最終的には歯を失うリスクが高まるのです。
ここでは、歯周病の進行度に応じた各段階について詳しく解説します。
歯肉炎
歯周病の最初の段階が歯肉炎です。
この段階では、歯と歯茎の間にある歯肉溝にプラークが溜まることで、歯茎に炎症が生じます。
歯肉炎の特徴は炎症が歯茎に限局しているため、歯槽骨にはまだ影響が及んでいない点です。
症状としては、歯磨き時に歯茎から出血しやすくなり、歯茎が赤く腫れるでしょう。
この段階で適切なケアを徹底すれば、元の健康な状態に戻せます。
軽度歯周炎
歯肉炎が進行すると、軽度の歯周炎に移行します。
この段階では、炎症がさらに広がり、歯茎の腫れが目立つようになるでしょう。
歯周ポケットが深くなるため、そこに歯垢や歯石が溜まりやすくなり、歯槽骨の破壊が始まります。
症状としては、歯茎の腫れや出血に加え歯茎が柔らかくなり、膨らんでくるのです。 適切な治療を受ければこの段階でも症状を抑え、進行は止められます。
中度歯周炎
中度の歯周炎になると炎症はさらに進行し、歯周ポケットが一層深くなります。
歯槽骨は歯根の約半分まで破壊され、歯がぐらつき始めるでしょう。
さらに歯茎からの出血に加え膿が出ることもあり、強い口臭が発生します。
この段階になると、食事をする際に歯が痛み、歯が動く感覚が出てくるため、日常生活にも支障をきたします。
重度歯周炎
重度の歯周炎は、歯周病の最も進行した段階。
炎症が顎の骨にまで広がり、歯槽骨が半分以上破壊された状態となります。
このため、歯は著しくぐらつき、しっかりと噛むことができなくなるのです。
歯茎は炎症を起こし、膿が頻繁に出るようになり、口臭も非常に強くなります。
最悪の場合、歯が自然に抜け落ちることもあり、早急な治療が必要でしょう。
歯の揺れのレベル
歯周病が進行すると、歯を支える骨が減少し歯が揺れやすくなります。
歯の揺れは、歯周病の進行度を判断する重要な指標です。
軽度の歯周炎では歯がわずかに前後に動く程度ですが、進行するにつれて左右、さらに上下にも動くようになるでしょう。
重度の歯周炎になると、歯が全方向に動くようになり、治療が非常に困難になります。
歯科医院では、揺れの度合いを専用の器具で確認し、歯周病の進行度を評価します。
歯周病の治療方法
歯周病は、進行度に応じて異なる治療が必要です。
早期に発見されれば、比較的簡単なケアで症状を抑えられますが、進行してしまうとより複雑な治療が求められ、最悪の場合、抜歯が必要になってしまいます。
ここでは、歯周病の各段階における治療方法について詳しくみていきましょう。
関連記事:段階的に進行するお口のトラブル「歯周病」の治療期間と費用を解説
歯肉炎
歯周病の初期段階である歯肉炎は、主に歯茎の炎症が見られる状態です。
この段階では歯槽骨にまでダメージは及んでいないため、早期に発見すれば適切なセルフケアと歯科医院でのクリーニングにより、健康な状態に回復可能です。
特に重要なのは、日常的なブラッシングで歯と歯茎の境目をしっかりと清掃し、プラークが溜まらないようにすること。
また、歯科医院での定期的なクリーニングも、歯肉炎の予防に効果的です。
軽度歯周炎・中度歯周炎
歯肉炎が進行して軽度から中度の歯周炎になると、歯周ポケットが深くなり、そこに歯垢や歯石が溜まりやすくなります。
この段階では、専用の器具を用いて歯石を除去しなければいけません。
歯槽骨の破壊が始まっているため、日常的なブラッシングに加え、歯科医院での歯周治療が不可欠です。
歯周ポケット内の歯垢や歯石を取り除き、歯茎の炎症を抑えることで、症状の進行を止められます。
また、生活習慣の改善も重要であり、特に喫煙者は禁煙も検討すべきでしょう。
重度歯周炎
重度の歯周炎では、歯槽骨が大きく破壊され、歯が著しくぐらつく状態になります。
この段階になると歯の保存が難しくなり、抜歯が検討されるでしょう。
ただし、抜歯の判断は慎重にするべきであり、患者の全身状態や生活習慣、歯科治療に対する耐性などを総合的に考慮して決定します。
無理に歯を残すと、かえって他の歯に悪影響を及ぼす可能性があるため、歯科医と相談し最適な治療方針を決める流れになるでしょう。
抜歯後の治療としては、入れ歯やインプラントなどの選択肢があり、それぞれのメリットとリスクを理解した上で選びます。
抜歯後の治療方法
抜歯後はいくつかの選択肢があり、それぞれにメリットや適応条件があります。
患者の口腔状態や生活習慣、希望に応じて、適切な治療法を選びましょう。
ここでは、抜歯後の代表的な治療方法について解説します。
入れ歯
入れ歯は、歯を失ったときの最も一般的な治療法の一つです。
部分入れ歯は、残っている歯にクラスプという金具をかけて固定し、失った歯を補います。
入れ歯は、保険診療と自費診療の両方で作製可能です。
自費診療の入れ歯は、審美性や装着時の快適さに優れており、残存歯への負担を軽減する設計。
しかし、重度の歯周病で多くの歯を失った場合や、残存歯がぐらついている場合は、入れ歯を固定するのが難しいでしょう。
このような場合は、総入れ歯が適応されるケースが多いです。
ブリッジ
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削って支台とし、その上に連結した人工歯を装着する治療法。
ブリッジは、歯の欠損が少ない場合に適しており、見た目や機能性を回復するための効果的な方法です。
ただし、支台となる歯が十分に健康、かつ歯を大きく削るため、隣の歯に負担がかかるデメリットがあります。
また、重度の歯周病で周囲の歯がぐらついている場合は、ブリッジを支えるのが難しく、適用が制限されるケースもあります。
インプラント
インプラントは、顎の骨に人工歯根(フィクスチャー)を埋入し、その上に人工歯を装着する治療法です。
インプラントは、見た目や機能性が非常に優れており、自然な感覚で食事や会話を楽しめます。
また、周囲の歯に依存しないため、隣の歯に負担をかけることがありません。
ただし、インプラント治療には十分な骨量が必要であり、重度の歯周病で骨が大きく吸収されている場合は、骨造成などの追加治療が必要になるでしょう。
また、インプラントは自費診療となるため、費用が高額になるのもデメリットです。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーは、インプラントと入れ歯のメリットを組み合わせた治療法です。
顎の骨に数本のインプラントを埋入し、それに入れ歯を固定することで、安定性と快適性を両立させます。
この方法は、特に重度の歯周病で多くの歯を失った場合に適しており、従来の総入れ歯よりも安定感が高く、食事や会話がしやすくなります。
インプラントオーバーデンチャーは、通常のインプラントに比べ必要なインプラントの本数が少なく済むため、骨の状態が悪い患者でも治療が可能です。
特に、顎の骨が大きく吸収されている患者にとっては、有効な選択肢となるでしょう。
歯周病が進行するとどうなる?
歯周病は口腔内に限らず、全身の健康にも深刻な影響を及ぼす病気です。
進行した歯周病が全身疾患のリスクを高めるのです。
ここでは、歯周病が引き起こす主な全身疾患について詳しく解説します。
動脈硬化・心臓疾患
歯周病が進行すると歯周病菌が血管内に侵入し、血液を通じて全身を巡ります。
この過程で、歯周病菌が動脈内に脂肪の塊であるアテロームを形成しやすくし、動脈硬化のリスクを高めるのです。
動脈硬化が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞といった重大な心血管疾患を引き起こす可能性が高くなります。
実際、歯周病患者はそうでない人に比べ、これらの疾患にかかるリスクが高いと言われています。
高血糖・糖尿病
歯周病が進行すると、炎症によって体内のインスリンの作用が阻害され、血糖値が上昇しやすくなるのです。
糖尿病が進行すると免疫機能が低下し、歯周病がさらに悪化しやすくなる悪循環が生じます。
歯周病と糖尿病は相互に影響を及ぼし合う関係にあり、歯周病を適切に管理することで、糖尿病のコントロールが改善されることもあるのです。
早産・低体重児出産
歯周病に罹患している妊婦は、早産や低体重児出産のリスクが高まると言われています。
歯周病によって生じる炎症物質が血流に乗って子宮に影響を与え、早産や胎児の成長を妨げることが原因とされています。
特に妊娠中はホルモンバランスの変化によって歯周病が悪化しやすいため、注意が必要。歯周病の予防と管理が、母体と胎児の健康を守るために重要なのです。
誤嚥性肺炎
歯周病が進行すると、口腔内に溜まったプラークや歯周病菌が唾液とともに気管に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まります。
特に高齢者や嚥下機能が低下した人に多く見られ、重症化すると命に関わる場合も。
誤嚥性肺炎は予防可能な疾患であり、口腔ケアを徹底することでリスクを大幅に減らせます。
歯周病を予防する方法
歯周病の予防には、口腔内にプラークを溜めないことが最も重要です。
日々のブラッシングはもちろん大切ですが、家庭でのケアには限界があります。
特に歯と歯の間や奥歯などは、どれだけ丁寧にブラッシングしても完全にプラークを除去するのは難しいです。
そのため、日常的なケアと併せ、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けるのが、歯周病ケアには欠かせません。
歯周病以外に歯がグラグラする原因
歯がグラグラする原因は、歯周病だけではありません。
歯の揺れが気になる場合、他にもさまざまな要因が考えられます。
【要因】
- 一部の歯に過度な力がかかっている
- 歯の根の先に膿が溜まっている
- 歯の根が割れている
- 歯を強くぶつける
それぞれの原因について詳しく解説していきます。
一部の歯に過度な力がかかっている
歯ぎしりや食いしばり、歯並びの乱れなどが原因で、特定の歯に過度な力が集中する場合があります。
力の不均衡が続くと、歯根膜や周囲の骨がダメージを受け、次第に歯が揺れ始めます。
噛み合わせのバランスが崩れている場合は、これが原因で歯がグラグラすることがよく見られるのです。
歯の根の先に膿が溜まっている
虫歯が進行すると、歯の根の先に膿が溜まり始めることがあります。
膿が増えると、周囲の骨が溶かされ、歯を支える力が弱くなり、歯が揺れるようになります。
こうした状態は歯根の感染によって引き起こされるもので、早期の治療が必要です。
歯の根が割れている
歯の根にヒビが入ったり、割れてしまったりすると歯が揺れやすくなります。
神経を抜いた歯に多く見られる症状で、虫歯の治療後や過度な力がかかることで発生しやすくなります。
歯の根が割れると支えが弱くなるため、歯が不安定になってグラグラし始めるのです。
歯を強くぶつける
事故やスポーツなどで口元を強く打った場合、歯に直接的なダメージが加わり、歯が揺れることがあるでしょう。
物理的な衝撃によって、歯や歯根膜が損傷を受けると、歯がグラグラする原因になります。
この場合、歯や周囲の組織にどれだけのダメージがあるか診断し、適切な治療が必要です。
セルフケアと歯科医によるメンテナンスが歯周病ケアの基本
いかがでしたでしょうか?歯周病の進行度に応じた治療方法や、歯を失った後の対策についてご理解いただけたかと思います。
歯周病は早期に発見し、適切な治療を受けることで進行を防げます。
また、全身の健康にも影響を及ぼすため、予防に努めましょう。
今後も歯の健康を維持するために、定期的なチェックとセルフケアを意識してください。
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この記事を監修した人
日本
口腔外科学会
認定医
木下 恵泉
鶴見大学卒業後、年 町田市民病院に入職。また、赤十字病院や東京医科歯科大学顎顔面外科の勤務を経て、2018年に森の泉歯科の院長に就任。2023年3月に「オールインデンタルクリニック」を開院。
千歳烏山地区の人のために、自分のことのように相手のことを真剣に考え、1人1人に合わせた最善の治療を提案している。
略歴
2005年3月 鶴見大学 卒業
2005~2006年 町田市民病院(歯科口腔外科) 勤務
2006~2007年 武蔵野赤十字病院(歯科口腔外科) 勤務
2007~2011年 東京医科歯科大学顎顔面外科(歯科口腔外科) 勤務
2011~2018年 けやき歯科 勤務
2018年5月 森の泉歯科 院長就任
現在に至る